第二言語による作文過程におけるストラテジーとしての言語コードの切り換え
Hara Yuko, Research Student
The Centre for English Language Teacher Education,
University of Warwick, U.K.
この論文では、第二言語(外国語)として英語を使う学習者が英語で作文を
する際にその作業過程においてどのように日英の言語コードの切り換えを行い
それをどのようにストラテジーとして活用しているかの予備的な考察を報告して
いる。この考察のために、作文中の思考過程を被験者(英国留学中の日本人
大学生3人、大学院生2人の計5人)に発話してもらい、プロトコールデータを
採取した。各プロトコールを一定の基準によって分節化した後、その分節内での
コードの切り換え方によって分節を並列、組み込み、翻訳型の3つに分類し、さ
らに各分類中での日英の関係によって2つに下位分類した。この分類方法に基
づいて、量的な分析と質的な分析を試みた。量的な分析においては、各タイプの
頻度と作文評価の相関関係を回帰分析によって観察した。その結果、日英間の
切り換えを並列的に行うタイプ、つまり、一つの内容を英語と日本語の構造を並
列する形で発話しているタイプに関して有意義な結果が得られた一方、最も頻
繁に発現した英語の単語や語句が英語の構造から隔離された形で日本語の
構造に組み込まれているタイプでは、有意義な結果が得られなかった。こうした
タイプ間の効果の違いは各タイプの言語構造的な特徴とそれに伴う機能に起因
すると推察される。質的な分析においては、各タイプの機能を被験者の回顧イン
タビューに基づいて考察、整理した。それにより、各タイプはそれぞれに特徴的
な機能が意図されていることが明らかになった。本研究は以上のような英語学
習者の作文過程という認知活動における言語コードの切り換えについてのあく
まで試行的、予備的な段階の考察に過ぎず、データの規模や収集方法、分析
方法に関して、さらに改良が望まれる。