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Volume 4 No.1
November 1998
The Japan Journal of Multilingualism and Multiculturalism
多言語多文化研究
同時バイリンガル幼児におけるコード切り換え
英語-日本語を同時に学ぶ2才児の場

鹿野緑
名古屋大学言語文化部非常勤講師


この論文は、米国で英語と日本語を同時に習得した2才児の発話を定
期観察した事例研究である。2つの言語の「混合」のパターンが、言語
能力的な限界によるものであるのか、あるいは大人のバイリンガルが
行なうコード切り換えに近いものであるのかを分析した。その結果、Lanza
(1992)と同様、同時バイリンガルである被験者は、言語習得の初期に
おいてすでに2言語を区別していることが示された。また、大人と同様
な「場面、状況に応じた (situational)」コード切り換えが観察された。つ
まり、被験者は、相手の話者が行なったコード切り換えを言語的なきっ
かけとして切り換えに応じたり、文脈または場所の変化に応じて自ら
切り換えを行なったりしていた。しかし、年上のバイリンガルがコード切
り換えを会話の中に強調や引用の意味で活かす(Fotos, 1995)のに対
して、被験者が自ら切り換えを行なった例の中には、そのきっかけや理
由が特定できないものも見られた。全く同じ意味を2言語で繰り返す自
然な翻訳も多く観察されたが、表面的な類似性に反して年上のバイリ
ンガルのように語用論的方略に基づいた「会話的(conversational)」コ
ード切り換えとは特定し難い。文レベルのコード切り換えが多用されて
いるのは、ある言語で単語連想をした場合に文内の他のすべての要
素を引きずってその言語に切り換えたのが一因と思われる。被験者は
、バイリンガルでコミュニケーションを行なう場合の方略がまだ未熟であ
る一方、言語習得の初期にすでに大人の切り換えと共通性のあるコー
ド切り換えを行なっていることがデータから示唆された。