最近の帰国生徒
日本の社会に溶け込みやすくなっているか?

慶応塾湘南藤沢中等部・高等部
藤田真理子

最近海外から帰国してくる子どもたちは以前の帰国生徒と違うという指摘があるが
、その違いをもたらした原因については十分な研究があるとは言えない。本研究の目
的は次の問いに答えることである。最近の帰国生徒は以前の帰国生徒とどう違うのか
。その違いをもたらしているのは何か。また、帰国生徒を取り巻く環境や帰国生徒の
言語力は最近はどのようなものなのか。北米に2年間以上滞在し、最近帰国した36
人の帰国生徒が本研究に参加した。面接、質問紙、英語と日本語の語彙テストを使っ
てデータを採集した。
その結果、日本の子どもたちの海外の教育が日本化していることが以前とは違う点
であり、このことが最近の帰国生徒に大きな影響を与えていることが判明した。北米
では現地校の勉強に加えて、補習校、塾、そして通信講座による勉強で子どもたちは
忙しい。海外に生活していながら日本にいるかのように受験の準備にあけくれている
状態である。従って、日本の学校や環境に適応することはもはや帰国生徒にとって問
題ではなく、帰国後、いかにして日本の学校への受験に成功するかということが大き
な関心事となっている。また、現地での異文化間体験をする機会が減少しているのだ
ろうか。ネイティーブ並みの英語力に達していたのは36人中、8人しかいなかった
。その上、帰国してからも日本の学校にいなかった空白を埋めるための努力が必要と
され、英語力を保持できない状態にある。一方、帰国生徒を受け入れる学校では、帰
国生徒のバイリンガル・バイカルチュラルな面を認知している学校はまだ少ないようだ。
日本社会の画一性や閉鎖性が帰国してくる子どもたちから以前の帰国生徒の特徴で
あった「帰国生徒らしさ」を奪っているようである。帰国生徒特有の強い個性はいつ
しか消えてしまう危険性がある。日本の教育をさらに多様化し、日本の社会を言語的
にも文化的にも開かれたものにするには帰国生徒の海外経験を豊かなものにすべきで
あろう。




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Volume 5 No.1
November 1999
The Japan Journal of Multilingualism and Multiculturalism
多言語多文化研究