日本語・英語バイリンガル児に見られるストラテジーの考察
清水友子
相模女子大学
このケース・スタディは、日本語・英語バイリンガル児が日本語と英語での読み
習得において、文字を解読するために用いるストラテジーと、その習得過程を明
らかにすることを目的にしたものである。観察対象者は、オーストラリアに在住す
る日本人女児で、名前はアカリである。アカリは5歳になった頃、第一言語(日
本語)と第二言語(英語)の両言語で「読む」ことに大きな興味を示し始めた。観
察対象者が見慣れない単語に出くわした時、どのような情報(手がかり)を頼り
にして読もうとするのかを調べるため、彼女が行った日本語(ひらがな)と英語で
の音読行動を7ヶ月間(4;11歳から5;6歳まで)観察し、Clay(1995)の枠組みを適
合させた方法で分析した。また、コード切り換えなど、バイリンガル児特有の現
象が読み行動に現れないか、という点にも留意した。その結果、日本語と英語
の「読む技術」は文字体系によって全く異なるものが要求されるが、単語を読み
取るために必要な根底にあるストラテジーや基本的な読みの過程には、二言語
間で類似点が見られた。アカリの読みの過程に関しては、殆どの場合、最初に
「文字」からくる情報を頼りに単語を読もうとした。次に、自分で間違った読み方を
したと気がついた場合、再度「文字」を確かめ、また、その単語の「意味」を調べ
て間違いを修正しようと試みた。このようなストラテジーは時間を追うごとに進化
していった。また、アカリの読み能力は、自身の発話能力や発話パターンに大き
く影響されていた。英語を読む際に、日本語による発話(コード切り換え)がしばし
ば観察された。これらの結果は、第一言語を家庭で、そして第二言語を学校で習
得しているバイリンガル児童の読み書き能力向上のために、第一言語の発達が
重要であることを示唆している。