少数言語話者の子どもたちが母語を維持することは望ましい
ことされているが、母語維持の難しいことと、子どもたちの母
語習得が不完全になりがちであることは、先行研究で示され
てきた。それゆえ、母語が話される国での体験入学は母語を
強めるカンフル剤として注目を集めてきた。本研究ではそのよ
うな経験が米国の日本人移民(親たちは日本人か英語母語
話者と結婚している)の子弟の日本語力にどのような効果が
あるのかを調べた。日本語と英語のバイリンガルの二世の子
どもたち4人(年齢は3歳9ヶ月から9歳4ヶ月で、4人のうち3
人はアメリカ人の父と日本人の母を持ち、一人は両親が日本
人)は英語と日本語を第一言語として同時に習得しているが、
親と日本に行き、4〜6週間日本の学校に体験入学した。体
験入学の効果を調べるために、家庭での自然な会話の録音
を日本への出発前に一回、日本滞在中に二回、帰米後二回、
分析した。日本語の完全さを測る尺度として助詞は重要であ
るので、子どもたちと親の助詞の使用、子どもたちの助詞の
エラーを調べ、次のような結果が得られた。1)体験入学は出
発前から母語としての日本語の強い子どもの日本語習得をさ
らに促した、2)助詞の使用に向上が見られなかった子どもた
ちに、第一言語喪失と第一言語習得の両方のエラーが見られ
た。これらの結果は、少数言語話者の子どもの母語をサポー
トする方法としての体験入学の効果や、第一、第二言語習得、
第一言語喪失、第一言語不完全習得を統合しようとする研究
に示唆を与えてくれる。